少子高齢化社会により、高齢者の意見が政治に反映されやすいシルバー民主主義が問題になっています。ただでさえ若年層の投票率が低いのに、少子化の影響で人口構成に占める若者の比率は減り続けています。政治家も集票のために高齢者に受けのよい政策を掲げがちになります。総務省のデータによれば、団塊世代が現役世代の50代前半だった2000年の衆議院選挙では、65歳以上が人口に占める割合は2割未満で、投票者全体の4分の1程度でした。一方で昨年の衆議院選挙は、人口のうち4分の1を超す存在になった65歳以上が投票者の4割近くを占めています。選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、高齢者の存在は大きくなっています。
そこで考えられるのが、ドメイン投票方式です。選挙権のない子どもの親権者に対し、その子どもの数だけ投票権を追加して付与する投票方式です。すなわち、子どもに投票権を与えて親が投票することになり、間接的に選挙権のない者にも投票権を与えることになります。子育て世代に発効を与えることになります。将来世代への投資、少子化対策が重視されるようになります。しかし一方では、未成年者にも投票権を与えるという本来の選挙の趣旨から逸脱しているとの意見もあります。
しかし有権者1人の影響力を変える仕組みの導入は、現実には難しいものがあります。高齢者の理解が得にくく、人権問題にもなりかねません。選挙制度の議論を担う政党の利害も大いに絡んできます。多数決による民主主義は、社会が分断されず、統合していることで機能します。現代社会では、ただでさえ価値観が多様となってきています。少子化が、若者と高齢者、都市と地方の利害の分断を深めないような仕組み作りが大切です。
(2018年3月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)