ニューロダイバーシティーの必要性

ニューロダイバーシティーが、これからの重要な経営テーマになるかもしれません。人手不足に直面しつつ、事業創出を求められる企業の間で、今後脳の多様性を意識した経営が広がるとされています。野村総合研究所の推計によれば、自閉症スペクトラム障害、ADHDと診断される人は約140万人もいます。働く機会の少なさなどによる経済損失は、年2兆円を超すとされています。
障害を抱える人の選択肢を増やす活動が大事なのは言うまでもありません。しかし、障害の有無とは関係なく、そもそも人の脳は多様で、もののとらえ方、体験、感覚は人によって違います。ニューロダイバーシティーの概念を障害者雇用の枠組みで解釈することは狭小で、全ての人を理解するための鍵になります。
近年、脳神経科学は進展し、脳の個人差についての研究も目立つようになってきました。多様性に満ちた人間を、普通、平均的といった基準でくくり、全員に固定的なルール、尺度をあてはめるとすると、無理が生じます。企業経営で考えれば、力を発揮できる条件は社員ごとに異なり、個別に最適化した働き方が重要ということになります。互いに似ていない脳がチームとなり頭をひねるからこそ、新しいものが生まれます。率直かつ安全に情報や意見をやりとりし、アイディアをかけ合わせることでイノベーションが起きます。
社員を画一的に扱い、規格化されたレンガを積んだような組織より、いろいろな特性をもつ社員が組み合わさる石垣的な組織の方が激しい時代の変化に適応できるようになり、強くなります。今や多様性重視をうたう企業も多くなり、性別や人種、年齢などの指標を理解する視点を加えれば、様々な人材を引き寄せ力を引き出す人事や評価、採用のヒントが掴めるかもしれません。

 

(2024年1月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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