ネット依存による略取誘拐の増加

 子どもを狙う誘拐が、10年で約3倍に増えています。無理やり連れ去る手口ではなく、SNSやオンラインゲームを通じて知り合った大人を信頼し、子ども自ら会いに行くケースが目立ちます。スマートフォンで子どもが誰とやり取りしているか親には見えにくく、フィルタリングの設定やリスクを正しく理解する啓発が必要です。

 人の生命や財産に対する深刻な危害となる重要犯罪として、殺人や強盗などは近年減少傾向にある一方、顕著に増加しているのが略取誘拐です。2023年に全国の警察で526件認知され、10年間で2.7倍に増えています。刑法改正により実質的な厳罰化が図られた不同意性交なども多いのですが、増加率は略取誘拐が上回っています。

 警察によれば、2023年は少なくとも未成年の被害者の36.7%が、加害者とSNSやオンラインゲームでやり取りをしています。2014年は小学生以下の被害が約5割で中高生は約2割ほどでしたが、近年はネット利用がより盛んな中高生の被害が増えて小学生を逆転しています。未就学児童では親族による略取誘拐が大半を占めており、両親の離婚に伴う親権争いなどが背景にあるとみられます。

 ネット空間への依存も背景にあります。ニフティの調査によれば、中学生の74.6%にネットの友達がおり、うち50.4%が実際の友達より居心地が良いと答えています。理由は、素の自分を出せるが72.6%が最も多く、年齢関係なく仲良くなれるが69.3%なども上位を占めています。子どもは、ネットの友人の優しい言葉で空虚感や孤独感を満たしています。保護者や教師が声をかけて関わらなければ、子どもは加害者との関係から抜け出せません。

(2025年2月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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