コロナ禍で社会人のネット依存症が増えています。インターネット依存症とはネットを利用する行動をコントロールできなくなる状態を言います。具体的には利用時間や投入金額を制限できず、生活に支障をきたすようになります。圧倒的に多いのはゲームですが、最近はYouTubeなどの動画を延々と見続けるケースも増えています。
依存症になる原理は、アルコールやギャンブルと変わりません。ネット利用により、脳内にドーパミンというホルモンが分泌されて、快感を覚え、やめられなくなってしまいます。ドーパミンは積極性を出すスイッチであり、前向きに行動する意欲を失うようなストレスを感じると、ドーパミンを出して対抗します。
しかし、アルコールやネットなど外部の刺激に頼り続けていると、いざストレスを感じた時にドーパミンが出なくなりイライラします。昼夜逆転による不眠症などの睡眠障害、運動不足から体力や骨密度の低下、食事がおろそかになって低栄養になることもあります。家族や仕事が二の次になり人間関係も壊れていきます。
アルコール依存症と違って、ネット依存症には治療薬がありません。ネット依存症にならないためには、まず依存の怖さを知り、ネット以外の楽しみやストレス解消法を持つことです。レコーディング・ダイエットのように、毎日のネット利用時間を記録して振り返ることは効果的です。家族のいる部屋でパソコンを使うのも、有効な予防法になります。ストレス解消はやはり運動がベストです。筋トレやマラソンなど、続けていけば確実に成長できる運動が勧められます。やり遂げたという達成感を得ることで、鬱の予防にもなります。
(2021年1月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)