ノンメディカル卵子凍結とは

東京都が、卵子凍結の助成を始めます。卵子を取り出して凍結保存し、後に妊娠や出産に結びつける生殖医療の一つです。元々は若い女性のがん患者が抗がん剤や放射線の治療で不妊になる恐れがある時に、出産の可能性を残すための技術です。これまで43歳未満のがん患者らを対象にしてた助成があり、医学的卵子凍結と呼ばれています。今回は都が2023年度から健康な女性も対象にする方針で、ノンメディカル卵子凍結と呼ばれます。
30歳代後半になると卵子の数と質が急激に低下し、妊娠しにくくなります。若いうちに卵子を凍結保存しておいて、出産や育児の環境が整った時に融解し、体外受精などで妊娠を目指す仕組みです。若い時の卵子の方が妊娠しやすいのですが、卵子を凍結したからといって妊娠や出産を必ずしも保証されません。日本産婦人科学会の専門委員会は、2015年に基本的には推奨しない、妊娠と出産は適切な年齢で行われることが望ましいとしています。日本生殖医学会の見解では、採卵時の年齢は36歳未満が望ましいとしています。
これまでの報告によれば、卵子1個あたりの出生率は4.5~12%です。妊娠出産するには、少なくとも10~15個の卵子を採取し、凍結保存しておく必要があります。英国での研究では、凍結の理由はパートナーがいないが最も多く、凍結された卵子の9割が結局は使われていません。
卵子凍結は自費診療なので、医療機関によって異なりますが、30万~50万円程度の費用がかかります。凍結保存を延長するには更新料も必要です。妊娠・出産に対して、選択肢が広がることは良いことですが、倫理的には、将来パートナーとなる人の意思の問題もあります。また、高齢出産のリスクは卵子凍結では解決されません。とりあえず凍結保存して安心というのではなく、いつ頃使うのか、ライフプランもふまえて検討する必要があります。

(2023年3月12日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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