ヒトゲノムとは、人間の親から子に伝わる全遺伝情報の1セットで、設計図に当たります。情報は、DNAを構成するアデニン(A)グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類の塩基約30億個の配列からなり、広辞苑の文字数に換算すると約200冊分に相当します。顔つきや肌の色、身長などの個人差は、塩基の約0.1%の違いで生じると言われています。
ヒトゲノムを構成する約30億個の塩基配列を全て解読しようというヒトゲノム計画は、日米欧の研究機関が協力して1990年に始まりました。ゲノムの概要が英科学誌ネイチャーに掲載されたのは、約10年後の2001年2月です。解読の完了が宣言されたのは、2003年4月で、約3,000億円の費用と13年の歳月がかかりました。
解読技術は進歩を続け、今では1人分のゲノムは10万円以下の費用で、1、2日で解読可能となっています。当初、人間の遺伝子の数は、約10万個と予想されていましたが、実際は2万数千個で、ショウジョウバエの約1万4,000個、線虫の約2万個と大きな差がありませんでした。
(2021年9月26日 読売新聞)
(吉村 やすのり)