遺伝子を改変できる新技術ゲノム編集で、人間の受精卵を改変する基礎研究の実施計画が、英国で承認されました。中国で昨年4月異常がある受精卵をゲノム編集すること改変したとする論文が話題となりましたが、正常な受精卵を使った研究が認められたのは世界で初めてです。英政府が管轄するヒトの受精・胚研究認可局(HFEA)によって、研究が認められました。不妊治療で余った受精卵を両親の同意を得て入手し、培養期間は受精後7日間に限定しています。受精卵が成長するメカニズムを遺伝子のレベルで解明し、体外受精や不妊治療の改善につなげることが狙いです。子宮に移植して子どもを産ませることは禁止しています。
日本では、ゲノム編集による受精卵の改変に対する法的な規制はありませんが、生命倫理専門調査会で現在検討されています。現時点での受精卵のゲノム編集に関しては、マウス受精卵を用いた研究でも塩基置換や遺伝子挿入の効率がまだ十分ではなく、目的の遺伝子変異の導入には多くの受精卵が必要となります。今回ヒトの受精卵を用いた研究の承認には賛否両論がありますが、実験動物による基礎的検討がもう少し必要と思われます。クローン胚と同様に、改変した胚を子宮に戻さないという歯止めはもうけていますが、ヒトでの基礎研究は時期尚早だと思います。確かにヒトと実験動物とでは種差があるため、ヒトでの研究結果が必要なことも事実です。さらに研究目的としては、不妊治療の改善というより、遺伝子の異常によっておこる様々な疾患に対する治療が優先されると思います。
(2016年2月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)
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