京都大の斉藤通紀教授らは、人のiPS細胞から精子や卵子のもととなる始原生殖細胞を作る実験に成功しました。今後、この細胞から卵子が作られるようになれば、不妊や遺伝病の原因解明につながることが期待されます。始原生殖細胞は、受精卵が子宮に着床した後の胎芽に現れるため、母体から取り出して研究に使うことはできませんでした。彼らは、すでにiPS細胞を使ってマウスの始原生殖細胞を作り、マウスの体内で卵子と精子に変えて、子どもを得ることに世界で初めて成功しています。
始原生殖細胞に特微的な遺伝子が働くと光るiPS細胞を作り、様々な条件で培養し、特定の2種類の化合物で刺激した細胞を使えば、マウスと同じ手法でヒトの始原生殖細胞を効率良く作り出せることを見つけ出しました。今後、こうした細胞を使って卵子や精子を体外で作る研究が進めば、不妊や遺伝病の原因がわかる可能性もでてきます。しかしながら、始原生殖細胞から精子や卵子を体外で作ることは、現時点ではまだできません。まだまだ超えなければならないハ-ドルはたくさんあります。
(2015年7月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)