ヒートショックとは、急激な温度差により血圧が大きく変動し、体に負担がかかって体調不良に陥ることを示します。意識が低下するほか、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの原因にもなります。症状が重いと死に至る危険もあります。10月から4月は、狭心症や心筋梗塞などによる心停止の事故が増えますが、背景としてヒートショックが考えられています。発生リスクが高いのは、血圧の調整機能が低下しがちな高齢者など血圧が不安定な人です。糖尿病や高脂血症など生活習慣病のある人も要注意です。
暖かい部屋で過ごした後、入浴しようと室温の低い脱衣所で服を脱ぐと、血管が収縮して血圧は上昇します。寒い浴室に入ったり、急に湯につかったりすると、刺激で血圧はさらに上昇します。風呂でしばらく温かい湯につかるうちに、今度は血管が拡張し、血圧は急降下します。この時意識を失って浴槽内で溺死することが、冬場の入浴時の事故の主な原因と考えられています。
室温が下がりやすく注意が必要なのが、肌の露出が多くなる浴室やトイレです。湯温は41度以下に保ちます。42度と41度では、体にかかる負担がかなり異なります。湯につかる時間は1回10分以内にし、食後1時間以内や飲酒後の入浴は避けるべきです。
(2019年1月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)