ヒートショックは、温度変化による血圧上昇の急激な変動が、不整脈や心筋梗塞、脳出血、失神を引き起こします。特に注意が必要なのが、入浴やトイレなど、低温の場所で衣服を脱ぐ場面です。入浴時では、暖かい居室から冷えた脱衣所に入る際に、血管が収縮して血圧が上昇します。冷たい浴室に入ると、さらに血圧は上がります。早く温まろうとすぐに熱い湯に入ると、その刺激で血圧が上昇します。体が温まるにつれ血圧は下がりますが、冷えた脱衣所で再び血圧が上がってしまいます。
湯船で寝そべった状態から急に立ち上がると、血圧は一気に降下し、立ち眩みを起こし、転倒や失神することがあります。暖かい居室から冷えたトイレや廊下に行く時や、冷えた部屋での着替え、起床時なども注意が必要です。特に朝は自律神経の中でも交感神経が働き、体は血圧を上げてしまいます。そこにヒートショックが加わると、急激な血圧上昇を招きやすくなります。
動脈硬化で血管がもろくなっている高齢者は要注意です。若くても、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの動脈硬化疾患や、不整脈などの循環器疾患の持病がある人も用心が必要です。コロナ下では、ストレスで血圧が上がる人も少なくありません。また、運動不足や過食は動脈硬化を進めます。
ヒートショックを防ぐ一番の方法は、家の中の温度差を少なくすることです。全室を温められない場合は、脱衣所やトイレに暖房器具を置き、浴室を入浴前にシャワーなどで十分に温めておくことが必要になります。就寝中の寝室の室温は18度以上に保ち、朝は部屋を温めておくため、リビングや台所の暖房器具のタイマーをセットしておくことが大切です。この冬は感染症予防のため、換気をする機会も多くなっています。人がいない部屋の窓を開け、人がいる部屋の窓を少し開ける2段階換気をすると、急激な室温の低下を起こしにくくなります。
(2020年12月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)