東北大学の研究チームが、血液凝固の作用があるビタミンKに、細胞死の一つを防ぐ効果があることを明らかにしています。この細胞死は、フェロトーシスと呼ばれています。フェロトーシスは2012年に提唱され、新細胞内に過剰に酸化された脂質がたまることで引き起こされます。緑色の野菜や肉、納豆などに含まれるビタミンKに、この細胞死を防ぐ作用があることを発見しました。
細胞内のFSP1という酵素が、ビタミンKを①酸化型という状態から、②還元型と呼ばれる状態に変化させます。②の状態になったビタミンKが細胞内の脂質の酸化を防ぎ、結果として細胞死を防いでいました。この細胞死は、アルツハイマー病のほか、腎臓の疾患などへの関与が報告されています。
ビタミンKは、ブロッコリー、モロヘイヤ、ほうれん草などの緑黄色野菜、納豆、わかめ・海苔などの海藻に多く含まれていますが、実験で細胞死を防ぐのに必要なビタミンKは、食事から摂取できる量よりもはるかに多いとされています。そのため、残念ながら現時点では、ビタミンKが豊富な食品に病気の予防効果があるなどのことは言えません。
(2022年8月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)