ピルと血栓症

ピル服用女性には注意をしなければならない副作用に血栓症がある。外国人に比べて血栓症の頻度は極めて低いが、日本人の血栓症は、血液凝固系の検査では異常が認められない女性に発症することがほとんどであり、予知は難しいとされている。

 静脈血栓症のリスクを表に示す。ピルを服用していない若年女性の相対リスクを1とすると、低用量ピルを服用すると、3-4倍になる。確かにそのリスクは上昇するが、妊婦が血栓症になるリスクに比較すると1/3程度である。欧米では遺伝病であるライデン突然変異保持者が多く、家族歴として血栓症の要因を持っていることが多い。

 ピルで血栓症が増加との報道がでると、ピルの服用を中止する女性が増加することが予想される。しかしながら、ピルには数多くの副効用が存在することも事実であり、実際の血栓症のリスクも極めて低いことを理解しておく必要がある。産婦人科での健診を行った上で、適応の禁忌や血栓総の前駆症状を知ることにより、血栓症の発症を回避することができると思われる。ピルを服用することによる効用を忘れないで欲しい。

(2013年12月17日 朝日新聞)

(吉村 やすのり)

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