新型コロナウイルスの感染者や死亡者の割合は、現在でもなお欧米で高く、日本を含む東アジアでは低率です。ファクターXが存在する可能性が指摘されていますが、未だにその理由は解明されていません。日本と海外の違いとしてよく取り上げられるのは、生活様式です。例えばマスク着用率です。日本リサーチセンターなどの26カ国・地域へのネット調査によれば、3月半ばに新型コロナ対策として公共の場ではマスクを着けると答えた人は、日本の62%に対して英米が1~5%と、大きな差が見られています。マスクはとりわけ、感染者が周りにウイルスを広げないために重要とされるようになってきました。感染が広がるにつれ、イタリアなど着用する人が増えた国もあります。
遺伝的な要因も考えられています。沖縄科学技術大学院大らのデータによれば、遺伝子の特徴が重症化に関係している可能性を報告しています。約4万年前に絶滅したとされるネアンデルタール人に特有の遺伝子を持つ人は、日本など東アジアではほとんどおらず、欧州8%、インドなど南アジア30%など、地域により異なっています。この特徴をもつ人は、肺での免疫反応を過剰にするなどして、重症化を招いている可能性があるとしています。
国立国際医療研究センター研究所などのチームが、血圧の調整などにかかわるACE1というたんぱく質の遺伝子のタイプと感染や重症化との関係を指摘しています。結核予防のワクチンであるBCGとの関係を指摘する説もあります。日本などBCGの実施率が高い地域では、そうでない地域に比べ感染などが少ないとされています。いずれにしても、ファクターXが同定されたわけではありません。
(2020年12月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)