フリーアドレス制度の導入

 オフィスの中で固定の席を持たず、どこでも仕事ができるフリーアドレス制度を導入する企業が増えています。オフィス家具大手のイトーキの調査によれば、首都圏を中心に2021~2023年度に竣工したオフィス111社のうち、フリーアドレスの採用率は8割でした。近年、民間企業だけでなく全国の自治体でも導入が進んでいます。

 一方で、メリットを生かせずに見直すケースも出てきています。チーム内でのコミュニケーションが希薄になった、出社率が高い時座る席がないなどの不満が、社員から漏れるようになることもあります。誰がどこにいるか分からない、会議室予約が煩雑といったフリーアドレスの課題も出てきています。フリーアドレスはオフィス改革の一手段であり、導入の目的や目標を明確にすることが大切です。

 フリーアドレスを導入して終わりではなく、柔軟に運用することが大切です。管理部門など不向きな業務内容もあります。チーム単位で座席を固定するグループアドレスの導入や、新入社員が慣れるまでは近くに相談できる人の席を設けることもアイデアです。既存の島型対向式レイアウトを単にフリーアドレス化しただけでは、働く場所の選択肢が少ない上に自分の席が確保されていないため、心理的・身体的ストレスが増加することもあります。目的に応じた席を用意するなどの工夫が必要となります。また共通ルールやマナーの周知、社員へのヒアリングも大切です。

(2025年9月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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