糖尿病治療のため、豚の膵島をカプセルに封入してヒトに移植する臨床研究が実施されています。対象は、膵臓にある膵島の細胞が破壊され、血糖を下げる働きのあるインスリンを分泌できない1型糖尿病の患者です。通常、インスリンの注射による治療が行われています。国内では、人の脳死提供者からの膵島の移植も行われていますが、提供者不足で実施は年数件にとどまっています。iPS細胞からインスリンを出す細胞を作る研究は、臨床応用までにはまだかなり時間がかかります。
ブタの膵島から分泌されるインスリンの構造や機能は、人とほぼ同じです。ブタの膵臓から採取した膵島を直径0.5ミリの特殊な素材のカプセルで覆い、免疫拒絶反応を起さず、インスリンがしみ出るように加工しています。この臨床研究はアルゼンチンで実施されました。血糖の状態を示すヘモグロビンA1cは4人全員で下がり、平均値では2年以上にわたり糖尿病治療の目標となる7%未満を維持しているとのことです。人の膵島移植の提供者が少ない中、ブタの膵島が活用できるようになれば、多くの重症糖尿病患者を治療することができるようになるかもしれません。
(2016年3月17日 読売新聞)
(吉村 やすのり)
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