失った組織や臓器を再生する再生医療を犬や猫などのペットの治療に応用する試みが広がってきています。ペット向けの支出額は増えていることに加え、法規制がゆるく、人間向けでは難しい領域でも実用化が進んできています。現時点で、ペットの再生医療の安全性については、企業や獣医師など個別の判断や取り組みに任せられています。人間にくらべて規制は緩く、獣医師らが加盟する日本獣医再生医療学会が、今年4月に再生医療のガイドラインを定めていますが、罰則などの拘束力はありません。
医師は全国に32万人いるとされていますが、獣医師はその8分の1の4万人にとどまっています。犬や猫に対する再生医療の学術論文も人間向けと比べれば少なく、確実に証明されたとするデータは限られています。犬や猫の幹細胞を増やして神経を治療する再生医療は、1回あたり10万~30万円程度かかります。人間の病気は公的な健康保険でカバーされるため、自己負担は治療費のうち1~3割ですが、ペットの治療は自由診療で、原則全額自己負担となります。
(2018年12月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)