BNCTは、あらかじめ患者にがん細胞に選択的に取り込まれるホウ素化合物(薬剤)を投与します。その後、患部に加速器を利用して作り出した中性子を照射します。中性子がホウ素にあたって核反応を起こすと、アルファ粒子とリチウム核が生じ、がんを内側から破壊します。粒子が飛ぶ距離は、ほぼ細胞内に限られるため、周囲の正常細胞にはほとんど影響がありません。
南東北BNCT研究センターは大阪医科大学と共同で、頭頸部がんと悪性脳腫瘍の企業治験(フェーズⅡ)を実施しています。年内にも企業が医療機器と薬剤の承認を国に申請する見通しです。社会の高齢化が進むとともに、がん患者の数は増えています。高齢者の中には、抗がん剤治療や手術に耐えられない患者もいます。患者への負担が軽く、より高い効果が期待できるこれらの治療法は、がん治療の現場に新たな革命をもたらすことが期待されます。
(2019年3月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)