東京圏は、認可保育園への入園を希望するも定員などにより入園できない待機児童のうち、全国の約38%を占めています。しかしその東京圏の保活事情に変化が見られるようになってきています。
これまで国や自治体は、待機児童解消に力を注いできました。特に国は2013~2017年度の待機児童解消加速化プランや2018~2020年度の子育て安心プランを掲げ、保育の受け皿整備が各自治体で精力的に進められてきました。その結果、東京都における認可保育園の設置数は、2015年4月の2,184カ所から2020年4月には3,325カ所に増え、待機児童数は、2014年4月の8,672人から2021年4月には1,000人を下回りました。
引き続き国は、待機児童ゼロを達成すべく、昨年12月に新子育て安心プランを発表し、2021~2024年度にかけて、さらに約14万人分の保育の受け皿を整備することなどを掲げています。国は、これまで認可保育園の量的拡充に重きを置いてきましたが、今後は東京のような大都市圏や市区町村の中でも、三つのエリアに分類して整備していくことが必要となります。
人口が集中し、待機児童が多く発生しているエリアでは、引き続き量的拡充を行うこと、人口増が起きていないエリアでは、量的拡充から質的拡充に軸足を移すこと、空きの出ている保育園があるエリアでは、持続可能性を検討し、必要なら統廃合を見据えることが必要となります。人口減少地域ではない東京圏でも、小規模保育園に空きが出てきています。
ポストコロナ下で出生数の減少に歯止めがかかっていません。東京圏のような人口集中エリアも含めて、ポストコロナの保育園整備の今後のキーワードは、質と持続可能性です。保育園は多いほど望ましいのですが、運営には税金が投入されるため、できる限り効果的に設置されなければなりません。加えて保育園が新設されれば保育士などの雇用も生まれることになり、短期で統廃合することも難しくなります。今後は、これまで拡充してきた既存の保育園の活用を第一に考えるべきです。
2008年をピークに人口減少社会に突入した日本において、男女ともに活躍できる社会を形成すること、そして、少子化対策は喫緊の最大の課題です。若い世代が流入し続ける東京圏において、効率的かつ持続可能な子育て支援策は何か、量の議論ばかりでなく、保育の質を担保しつつ、様々なミスマッチを解消して、保育を希望する全ての家庭が保育園を利用できる環境を目指すべきです。
(Wedge August 2021)
(吉村 やすのり)