ポリジェニックリスクスコア(PRS)を用いた着床前遺伝学的検査

 多くの人のゲノム(全遺伝情報)の解析が進み、ゲノム上にある無数の遺伝子変異と、病気のなりやすさや身体的特徴などとの関係が分かってきています。その人の持つ無数の変異の影響を総合的に評価し、一つの数値にまとめたものがポリジェニックリスクスコア(PRS)です。臨床現場で使われているものには、着床前遺伝学的検査(PGT)があります。受精卵の遺伝情報を調べ、流産のリスクを減らしたり、重い遺伝性疾患を持つ子の誕生を避けたりするために利用されています。原因遺伝子がはっきりしている病気を対象としていますが、このPRSを用いたPGT-Pが実施されています。

 解析技術が進歩し、ゲノム上にある無数の変異の個人差が、病気のなりやすさなどにどう関わるのかが分かってきました。集まったビッグデータをもとに、起こる可能性を統計的に出した確率がPRSです。これを受精卵の選別に利用しています。親が望む特徴になるよう人工的に受精卵のゲノムを書き換えるデザイナーベビーとは異なります。しかし、こうした命の選別は遺伝的に優劣があるという優生学の思想にもつながり、倫理面の問題が指摘されています。

 PRSの値は計算方法などで変わります。唯一無二の決まった結果が出るわけではありません。PRSは集団全体の評価に有効な手法であり、個の選別に使うには課題があります。

 病気のPRSは民族差もあると考えられています。PRSは日本人全体の傾向をとらえられるので、医療政策への活用が模索されています。一部の病気では、高リスク者の検診への誘導に生かせるかもしれません。多くの病気は生活習慣や環境要因が関わっており、ゲノムで全て説明できるわけではないことをまず理解すべきです。

(2026年1月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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