薬の多剤併用で害があるものをポリファーマシーと呼びます。高齢になると、複数の病気にかかることが多くなり、薬の種類や量が増えがちになります。若いころに比べ、薬を分解、排泄する体の機能は衰え、転倒や物忘れなどの副作用が出やすくなります。薬が6種類以上になると、副作用が増えるという報告もあります。しかし、薬の副作用として、ふらつきや転倒、物忘れ、うつ、食欲低下、便秘などがあっても、これらは高齢者によくみられる症状のため、見過ごされがちです。ふらふらして転びやすい人の中には、睡眠薬や降圧薬、抗うつ薬などの副作用が疑われることがあります。痛み止めの薬で、高血圧やむくみが起きているのに、降圧薬や利尿薬が出されることもあります。降圧薬が効きすぎてめまいや転倒を招いているのに、めまいの薬が出されることもあります。薬の副作用と気づかれずに、その症状に対して薬で対応され続け、薬が増えていく悪循環に陥ります。
勝手に自分で判断して、薬をやめるべきではありません。多すぎる薬を減らすことに意味はありますが、まずは医師と相談することが必要です。勝手にやめれば、病状が悪化することもあります。薬を飲まなかった時は、医師に報告すべきです。高齢者が副作用を起こしやすい薬はできるだけ避けることが望ましいのですが、患者によっては必要な場合もあります。治療の優先順位を考え、本当に必要な薬を選ぶことが大切です。複数の病気を治療する際、どの病気を優先するかは、医学的な判断と患者の希望で決まります。
(2019年2月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)