京都大学iPS細胞研究財団らは、患者の細胞から個別に作るマイiPS細胞を安く生産できる専用キットを2025年にも国内外で販売します。培養に必要な試薬や添加剤を一つにしたキットで、無菌設備がなくても製造できます。量産の課題だったコストや歩留まりが改善される見込みで、マイiPS細胞の普及に弾みがつくと思われます。
マイiPS細胞とは、患者本人から作製するiPS細胞のことで、患者の血液などから体細胞を採り数種類の遺伝子を入れて作ります。iPS細胞から作った治療用の細胞、組織、臓器を移植する場合、他人由来のiPS細胞では細胞表面のたんぱく質の型が違うため、拒絶反応が起こって体に悪影響を及ぼすリスクがあります。マイiPS細胞は自分の細胞由来のため、拒絶反応が起きません。
マイiPS細胞の弱点は、製造コストの高さです。他人由来のiPS細胞はあらかじめ作っておいてストックできるため製造コストは安くなります。マイiPS細胞はオーダーメードのため高くなり、1人分で約500万円かかっていました。将来はマイiPS細胞も含めて年間1,000人分のiPS細胞を製造できるようにします。AI技術も組み合わせ、マイiPSの1人分の製造コストを100万円程度に下げる目標を掲げています。

(2025年9月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)