妊娠や出産を機に職場を解雇されたり、精神的・肉体的ないやがらせを受けたりすることを、マタニティハラスメント(マタハラ)と呼びます。マタハラ行為が、労働法の積み重ねの中でほとんどが禁止されたり、不法行為となったりしていることはあまり知られていません。マタハラ行為は解雇や降格ばかりではなく、配置転換やいやがらせを含んでいて幅広く、統一した法的定義はありません。労働法には、妊娠や出産を理由として、会社が女性に不利益な扱いをするのを禁止した規定が数多くあります。法律を重ね合わせると、妊娠・出産から育児休業後まで隙間なく禁止行為や不法行為を決めています。
問題はこうした規定が企業の管理職に軽んじられていることと、規定を守らせる仕組みが不明瞭な点にあります。厚生労働省は、安倍首相のマタハラ根絶表明以降、新たな法制化の検討を始めています。雇用均等・児童家庭局は、今回の法制化検討では、マタハラを防止するため会社に何をしてもらうかが課題になるとしています。
(2015年8月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)