古いマンションほど区分所有者の高齢化が進んでいます。国土交通省によれば、築10年未満の住戸のうち世帯主が70歳以上の割合は8%ですが、築40年以上では48%に跳ね上がります。国土交通省によれば、法律にもとづく建て替え実績は、2023年時点で累計114件にとどまっています。背景には所有者にのしかかる重い費用負担があります。建て替え期を迎える建物は急増しています。
マンションには、子育て世代から高齢者まで幅広い世帯が住んでいます。建て替えや改修計画を巡る合意形成は容易ではありません。将来を見据えて資産価値を高めようと建て替えに前向きな若い世代と、貯金を老後の生活費に回したい高齢者層では、住まいへの要求が異なります。
国土交通省の調べでは、建て替えにかかる1人あたりの平均負担額は1996年までは344万円でした。資材高などによって2017~2021年にはおよそ1,941万円と5倍超に膨らんでいます。マンション住民にとっては、老後の蓄えをしていても、建て替え費用がかさめば一気に資金が枯渇してしまいます。
国の制度は、建て替え後に1戸あたり原則50㎡以上を確保するよう定めています。マンション購入世帯の平均入居者数である4人を前提にしています。持ち家世帯の入居者数は、2018年は2.35人となり減少傾向にあります。築40年以上のマンションのうち、面積要件を満たさない住戸は全体の2割程度を占めています。単身世帯も増えて、コンパクトな住戸を求める声が高まっています。
(2024年3月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)