人工的に臓器の環境を再現するオルガノイド(ミニ臓器)を創薬に活用する動きが広がっています。オルガノイドは幹細胞やiPS細胞から作られ、ヒトの臓器と似た構造や機能を再現できます。従来の創薬研究では、実験用マウスなどを使っており、試験薬がヒトの臓器の中でどう作用するかの予測が困難でした。オルガノイドを活用すれば、治験でヒトに投与する前に薬の作用などを効率的に検証できます。
臓器が機能不全に陥った場合、現在は臓器移植が一般的な治療法でしたが、腐敗・損傷している部分を切除し、代わりにオルガノイドを移植して機能を回復させることを目指しています。現在動物で実施している薬の効果や安全性などを評価する試験について、オルガノイドに置き換えられます。従来の医薬品に加え、低分子医薬品とバイオ医薬品の両方の性質を併せ持つ中分子医薬品と呼ばれる次世代医薬品の開発にも活用します。
オルガノイドは薬の評価や再生医療への活用により、世界の市場は拡大すると予測されています。グローバルインフォメーションなどは、2031年には2023年比約5倍の約150億ドル(約2兆2,000億円)の規模に成長すると予想しています。
(2024年12月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)