膝の痛みは、多くのランナーを悩ませるトラブルのひとつです。膝の外側上部に痛みが出る腸脛靱帯炎は、トップ選手から初心者まで誰にでも起こる代表的なランニング障害です。骨盤から膝の外側にかけて薄くて長い膜のような腸脛靱帯が、脚の曲げ伸ばしによって膝の骨の出っ張りとこすれることで炎症を誘発します。正確には、腸脛靱帯と骨の間にあるクッションの役割を果たす滑液包の腫れが痛みの正体で、ランナー膝とも呼ばれています。
原因は使いすぎです。フォームのバランスが崩れて体重をまっすぐ支えられなくなると、腸脛靱帯に負担がかかります。筋肉の疲労による柔軟性の低下は、症状を招きやすく、月間走行距離が多い人や速いランナーほど経験者が増え、体を支える筋力が十分でない人も痛めやすいとされています。運動時に痛みますが、トレーニングを終えれば引くことも多いのですが、軽視して判断を見誤れば日常生活に支障をきたし、完治に数カ月がかかる場合もあります。
骨盤付近や大腿部の外側に張りを感じたら、安静にすることです。違和感を覚えたら患部を冷やすアイシングも有効です。皮膚の感覚が鈍くなるまで、5~10分を3セットします。走る前に動きの確認の意味を込めて、股関節周りや尻の筋肉のストレッチも入念に行うことが大切です。
休む判断は難しいのですが、疲労感が抜けて腸脛靱帯の付け根のコンディションが良くなれば再開しても大丈夫です。ウォーキングやスロージョギングなど膝への衝撃が小さく、低負荷の運動から始め、徐々に通常のランニングに戻すことが必要です。大腿部の外側に感じる疲労は腸脛靱帯炎のリスクを示すサインです。
(2021年9月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)