通信制で学ぶ学生は、2005年度をピークに減り始めましたが、2021年度に大きく増加しています。文部科学省の学校基本調査によれば、2022年度の通信制の大学生数は約18万人であり、コロナ禍が始まった2020年度に比べ約2万人増えています。中でも、生涯学習の普及により、60歳以上の学生数は過去22年間で3倍以上に増えています。18~22歳の学生数も増加しており、2021年度は21世紀に入って初めて2万5,000人を超えました。学べる学科は法律などの実学から文学や芸術まで幅広くなっています。
コロナ禍によるオンライン授業の急速な拡大は、通学と通信の境界を曖昧にしています。一方で、通信制ならではの郵送テキストを主とした添削指導や、テレビ・ラジオによる放送授業は、パソコンに不慣れな高齢者やインターネットの通信環境が整わない人にも向いています。スクリーニングも、コロナ禍でオンライン化が進みました。キャンパスにほぼ通わず学位取得が可能な大学もあり、地方在住者にとって交通費や宿泊費の節約にもなっています。学費は、多くの大学で通学制の半分から4分の1程度です。さらに留学という道もあります。
リスキリングのための大学通信制は、自分で計画を立て学び続けることができます。地方で頑張っている苦労人に、学び直しの場を提供する大事な役割を果たしています。放送大学では、18歳以上であれば高校を卒業していなくても、所定の単位を修得することで大学卒業を目指す正規の学生として入学できる制度を設けています。しかし、通信制を所定の単位を修得して卒業できる学生は、3割以下であり、学び続ける努力が求められます。
(2022年12月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)