社員にキャリア自立を求める企業が増えるなか、社員の自由な学びを支援しようと中長期にわたるリスキリング休暇を導入する企業が広がっています。企業は、デジタルスキルなどの今後必須と思われる能力や知識の向上に努めています。しかし、経済環境の先行きは企業も読めず、どんなスキリングが将来につながるかを予見するのは困難です。そのため個人の自由な学びを支援しようとリスキリング休暇の導入が広がっています。
三菱商事は、2023年4月にサバティカル休職を新設しています。国内外の大学・大学院で学位を取得しようとする際に最長2年休めます。米製薬大手メルクの日本法人MSDは、年間40日まで自由に休めるディスカバリー休暇を持っています。
厚生労働省の能力開発基本調査によれば、正社員の96.5%が向上させたい能力・スキルがあると回答し、リスキリングへの関心は高くなっています。しかし、実際に自己啓発を行った割合は44.1%にとどまっています。ギャップの原因は時間がないことです。自己啓発を行う上での問題を尋ねた質問で、仕事が忙しくて余裕がないが60.0%とトップを占めています。
リスキリング休暇は徐々に広がっていますが、大半は無給です。現状改善のために、国は2025年10月に教育訓練休暇給付金制度を新設します。国が指定する教育訓練を受ける際、受講料・学費に加えて、休暇(無給)を取って訓練を受ける場合、賃金の6~8割を最長150日給付します。生活費を補塡し、教育訓練を一層受けやすくする狙いです。

(2025年2月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)