リチウムによる認知症抑制

 ハーバード大学の研究チームによれば、認知症で最も多いアルツハイマー病のような状態になりやすいマウスに、リチウムを飲ませると認知機能の低下が抑えられることを見つけ出しています。脳内のリチウムが不足すると記憶力が低下することも確認しています。新しい治療法の開発につながるとしています。

 亡くなった人の脳で27種類の金属の量を分析した結果、リチウムだけが、アルツハイマー病とその前段階の軽度認知障害(MCI)の人の両方で、認知機能に問題のない人より減少していました。アルツハイマー病の原因とされるタンパク質であるアミロイドβが沈着した部分にリチウムが取り込まれ、周囲の部分のリチウムが少なくなっていました。

 マウスにリチウムを減らした餌を与えたところ、認知機能が低下し、脳内でアミロイドβの沈着も進みました。アミロイドβの沈着が進むと、一層リチウムが枯渇していくと思われます。反対にアルツハイマー病状態になりやすいマウスにリチウムを加えた水を飲ませると、アミロイドβの沈着や記憶力の低下が抑えられました。

 リチウムは、現在双極性障害(そううつ病)の治療薬として炭酸リチウムが使われています。しかし、吐き気や腎機能障害などの中毒症状が出ることもあります。治療に使うには人での安全性や効果を確かめる必要があります。

(2025年8月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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