ワクチン報道について憶う

 ワクチンは感染症予防のための極めて有効な手段である。病気の撲滅にはワクチン接種が必要であることは言を待たない。しかしながら、残念なことに副反応が起こることがある。天然痘の根絶のために種痘が必要であり、種痘の接種が病気の蔓延防止大いに貢献したことより、ワクチンの有効性は明らかである。わが国においては副反応が問題となり、風疹のワクチンが接種されない時期があった。それにより去年風疹が大流行し、先天性風疹症候群が多発した。諸外国ではリスクとベネフィットを考慮し、ワクチン接種の有効性を国民が理解しているため、このように副反応で中止になるような事態になることはない。

 われわれの身体には遺伝的にもかなり個人差があり、さまざまな反応をおこす可能性がある。今回の子宮頸がんのワクチンの副反応も個々の遺伝的要因に起因するかもしれない。副反応を科学的に検証することが大切であり、副反応が起こるとワクチンの必要性を問う議論ばかりがされるわが国の状況は、先進国として見識のある対応とは思われない。社会的な利益を見据え、海外での状況を勘案し、感情的ではなく科学的に議論することが大切である。

(2014年2月27日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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