世界で新型コロナウイルスのデルタ型が猛威を振るうなか、従業員に対しワクチン接種をどこまで求めるかは難しい問題です。米国では有力企業が相次いで義務化を表明していますが、法制度が異なる日本企業は距離を置いています。
日本では、予防接種法でワクチン接種を努力義務と明記しています。厚生労働省が6月に公表した職場接種に関するQ&Aでも、企業に接種を強制するようなことがないよう留意するよう求めています。ワクチン接種やPCR検査を受けるかどうかは、憲法が保障する本人の自己決定権に基づくもので、プライバシー性も高くなっています。そのため、企業が接種や検査を業務として命令し、従わない場合に懲戒対象としたりすることは難しいとされています。
米国では、連邦政府機関の雇用機会均等委員会が、職場に立ち入る従業員に接種を義務づけられるとする指針を公表しています。米ユナイテッド航空は、10月下旬をめどに、米国拠点に所属する客室乗務員やパイロットらに接種を義務化します。連邦法に準じるこの指針に基づき、IT大手などが義務化に踏み切っています。
(2021年8月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)