新型コロナウイルスのワクチンの接種回数や自治体の在庫量は、国のワクチン接種記録システム(VRS)で一元的に管理されています。しかし、接種の入力が煩雑で遅れるケースが相次いでいます。ワクチン不足を訴える自治体も出てきており、今後の配送計画にも影響を及ぼしかねない状況です。
VRSは、国がリアルタイムに接種記録を管理するためにつくり、ワクチンの在庫把握にも利用されています。しかし、国がどんどん打てと急がせたことにより、自治体の入力が追いつかず、現実とシステム上の数字にギャップが生まれてしまっています。VRSの入力遅れは、地域ごとにさまざまな事情で生じています。
さらに接種状況の把握を難しくさせたのが、6月から始まった企業や大学の職域接種です。接種券がなくても接種を可能にしました。後日、自治体から本人に接種券が届けば、企業や大学に提出して、VRSに登録してもらうことになっています。自治体からすれば、住民の誰が職域接種を済ませたのかすぐに分からず、接種計画が立てづらくなってしまっています。
接種対象となる約1億1千万人分のワクチンは確保されていますが、7月以降は自治体への配送量が減ります。ワクチンの配分を最適化させるには、正確な接種状況や迅速な在庫把握が欠かせません。
(2021年7月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)