ワクチン開発の問題点

従来のワクチンは、ウイルスの毒性を弱めて体内に入れる生ワクチンと、感染性をなくしたウイルスやその一部を使う不活化ワクチンに分類されています。生ワクチンは麻疹など、不活化ワクチンはインフルエンザなどです。しかし、こうした従来型ワクチンは、ウイルスそのものをワクチンの材料に使うため、ウイルスを培養して増やすのに長い時間がかかり、感染を防ぐため厳重に管理された設備も必要となります。
最近では、開発時間やコストを抑えられるためのウイルスそのものを材料に使わないタイプのワクチンが考えられています。遺伝子操作技術を使ってウイルスのたんぱく質を作り、ワクチンの材料に使う遺伝子組み換えたんぱくワクチンや、ウイルスの外見そっくりなVLPワクチンがあります。さらに新しいタイプのワクチンとして、遺伝子ワクチンが開発されています。ウイルスの遺伝情報の一部だけを体内に入れることで免疫反応を起こすことができます。
通常ワクチンを接種すると、体内にウイルスを無力化する抗体ができ、発病や重症化を防ぎます。しかし、抗体がウイルスを無力化できないと、抗体がウイルスと免疫細胞をつなぐ架け橋のようになり、ウイルスが免疫細胞に入って増え、感染を強めることがあります。これがADE(抗体依存性感染増強)です。新型コロナウイルスが、ADEを引き起こすかどうかはまだ分かっていません。ワクチン後の重症化の原因はADEの可能性も否定できません。ワクチン開発にあたっては、ADEを含めた安全性を慎重に検証してゆく必要があります。

 

(2020年6月16日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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