内閣府が昨年末にまとめた2023年の国民1人あたりの名目GDPは、米ドル換算で前年比0.8%減の3万3,849ドルで、OECD加盟38カ国中22位でした。1位のルクセンブルクは約3.8倍で、6位の米国も約2.4倍です。日本の順位は2000年の2位をピークに下落傾向が続き、2022年に韓国を初めて下回りました。
1990年代後半からデフレ下で蔓延ったコストカット型経済の傷あとは小さくありません。日本企業がリストラを進めて安売りを競っていた頃、海外企業は投資を重ねて新製品やサービスの開発に力を注いでいました。その結果、日本勢は米国勢だけでなく、韓国や台湾、中国勢にも競り負けるようになってしまいました。
一人あたりの名目GDPの低下は、国民の豊かさを示します。日本は豊かさでも楽しさでも見劣りがします。戦後の日本は、安全、安心、清潔、正確、平等を保証する天国を官僚主導で築き上げた一方、面白みや3Y(欲、夢、やる気)のない社会をもたらしてしまいました。楽しい日本の本質は、画一性を排し、多様性を引き出すという点に尽きます。個性を封じる日本型システムの諸改革は、成長にも幸福にも資するはずです。国力を強めつつ、国民のウェルビーイングを高めるのは永続的な課題です。
(2025年2月18日 朝日新聞、日本経済新聞)
(吉村 やすのり)