安倍政権は一億総活躍社会を目指し、なかでも女性の活躍は重点課題になっています。2013年以降、就業者数は伸びており、その推進役は女性の就業者数の増大で、男性就業者数はほとんど変わっていません。一方、この間の実質国内総生産(GDP)は、ほぼ横ばいです。就業者数が伸びているのにGDPが横ばいなのは、1人当たりの生産性が下がっていることを意味します。このことは、夫1人の働きで成り立っていた家計が、夫婦共働きでなければ成り立たなくなることを意味します。女性が働こうとすれば、その前に保育園探しに奔走しなければなりません。奔走しても保育園が決まらず、都会では待機児童になることもあります。このように子育て家庭を取り巻く状況は、依然と厳しいものがあります。
女性の活躍の真の目的とは、女性を優遇することではなく、男女とも活躍して、総生産を増やすことにあります。しかし、現在のような非正規雇用や低賃金労働の拡大のみで、正規雇用の総需要を増やさなければ、生産性が増すとも思われません。最終需要の拡大こそが、一億総活躍社会の必要条件であり、それができれば、活躍の場は自然に広がってくるものと思われます。雇用安定とともに必要なことが保育所の確保です。特に女性進出を目指すなら、大企業は必ず、中小は複数の企業で保育室を作ることを義務づけるくらいの方策が必要になります。そうでなければ、例え雇用が増えても保育園探しがますます深刻化し、働くことが難しくなります。
(吉村 やすのり)