不妊治療と仕事との両立

日本産科婦人科学会によると、2019年に体外受精で生まれた子どもは過去最多の6万598人で、出生児の14.3人に1人の割合で誕生しています。2008年は2万1,704人で50.3人に1人でした。出生数は減少していますが、体外受精で生まれた子どもは増え続けています。
国は、高度な不妊治療に対する助成制度を2004年度に創設しました。当初は年度あたり上限10万円、期間は通算2年でしたが、段階的に拡充されてきて、現在は1回30万円で、女性が40歳未満なら1子につき6回まで受けられます。所得制限も撤廃され、事実婚も対象に含まれています。助成件数も当初の1万7,657件から、2019年度は13万5,529件に伸びています。
菅義偉前首相は、少子化対策の目玉として、来春からの不妊治療の公的医療保険の適用を打ち出しました。適用に向けては、治療範囲や医療サービスの公定価格(診療報酬)を決める必要があり、現在、中央社会保険医療協議会で議論されています。
厚生労働省が2017年度に実施した調査によれば、不妊治療経験がある女性176人のうち、両立ができずに40人が仕事を辞め、17人が治療をやめています。通院や診療の予定が立てづらく、体外受精を実施する際には、1ケ月に7~8回通院せざるを得ない状況にあります。国は、経済団体に対して、通院に必要な時間を確保しやすいように半日や時間単位で取得できる有給休暇、多目的な特別休暇、時差出勤といった柔軟な働き方の導入の検討を要請しています。
首都圏の大企業では、両立支援の取り組みが進んでいますが、地方ではまだ広がっていません。職場に知られたくない人がいることも配慮した選択肢を用意することも大切です。両立支援に取り組む中小企業の事業主には助成金が出ています。地方の中小企業も不妊治療の支援制度を導入することによって、不妊カップルへのサポートが必要となっています。

(2021年11月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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