少子化対策の一環として、不妊治療への公的保険適用が拡大されてから4月で1年となります。当事者からは、経済的な負担が軽くなったと歓迎の声が多く聞かれる一方、適用対象外の治療と併用すれば保険が全く利かなくなるため、治療の選択肢を狭めているとの意見も出ています。医療機関の事務作業は煩雑になり、患者の待ち時間が増えるなどの課題も見えてきています。
不妊に悩む人を支援するNPO法人Fineが、2022年7~10月に実施した調査によれば、保険適用前と比べて費用負担が減ったは計43%、増えたは計31%でした。増えたと回答した人は、適用外の検査や治療を受けているケースが比較的多く、適用範囲が狭いとの声もみられます。保険診療では、独身時代に凍結した未受精卵子を結婚後に使えないといった問題もみられます。保険適用されなかったら体外受精まで進めなかった、患者が増え医師と話す時間が減ったなど、様々な評価が寄せられています。
(2023年3月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)