加齢により、生殖機能だけでなく、その他の身体機能も低下し始めます。妊娠が成立したとしても、高血圧や糖尿病などの合併など妊娠経過に異常をきたす確率は高くなります。不妊治療を受ける女性は、この高齢妊娠のリスクを必ずしも深刻に受け止められているとは言い難い状況にあります。そのため妊娠のリスクを認識することなく、妊娠後に分娩機関を訪れることが多くなります。生殖医療を受けるにあたっては、高齢妊娠における分娩のリスクをあらかじめ医師から十分に説明を受けておく必要があります。
卵子提供や代理懐胎が許されれば、閉経した高齢女性でも妊娠することは可能です。分娩に携わる医師は、いかなる状況下での妊娠であっても、またその女性が高リスクであっても、妊娠の維持に努め、母児共に良好な予後が得られるように最大限の努力をしています。不妊治療においては、不妊治療と分娩に携わる医師が互いに緊密な連携を取り合うことが大切であり、さまざまな妊娠合併症の発症により入院せざるを得ない状況が起こりうること、流産や死産、さらには医学的な理由により早産となることがあることを十分に説明しておく必要があります。妊娠年齢の高齢化は医学的、社会的にさまざまな問題をおこしますが、最も尊重すべきは女性が自らの意志で自身の人生設計をすることにあります。ただ自身の人生の選択に際し、高齢妊娠に伴うリスクなどの情報を入手しておいたり、妊娠する前に医師とそのリスクについて相談しておくことが大切です。
(吉村」やすのり)