新型コロナウイルスの感染の広がりを受け、不急の手術や治療などを延期するよう、関連学会が全国の医療機関に求める動きが相次いでいます。感染への懸念や医療従事者の人手不足などが背景にありますが、治療を受けている人からは戸惑いの声があがっています。日本外科学会は、4月14日に手術の緊急度の目安をまとめています。地域の医療機関では、ベッド数やマスク、ガウンなどの防護具の在庫が不足するなど、医療体制が逼迫しています。そのため、がんや重い心臓病といった数日から数カ月以内に手術しないと致命的な疾患を除き、可能であれば延期としています。
コロナウイルスの感染リスクを考えると、最もウイルス量が多いのは鼻や鼻の奥です。日本耳鼻咽喉科学会は、鼻科手術は緊急性のあるものを除き、原則推奨しないとしています。日本口腔外科学会も不急の手術や外来での細かなしぶきが飛ぶ可能性もある口腔内手術の延期を検討するよう求めています。日本眼科学会の提言では、感染リスクの高い手術として、涙が鼻に抜ける道のつまりを取り除く涙道手術を挙げています。緊急性が高い手術を優先し、涙道手術を含めた急がない手術、治療は原則延期とする病院も出てきています。手術や入院に伴う感染拡大のリスクと延期することによる患者のデメリットを慎重に検討することが必要になります。
新型コロナの患者が増えれば人手がかかり、別の診療科の医療者が対応にまわる事態も起きえます。手術を延期できる場合、落ち着いた頃に手術を受けるほうが、患者と医療界の双方にメリットがあるとの考えも理にかなっています。医療崩壊を起こさないためにも、医療従事者を感染リスクから守ることが大切です。
(吉村 やすのり)