不登校の児童生徒数の増加

 文部科学省の調査によれば、不登校の児童生徒は、2022年度に過去最多の29万9,048人となり、10年連続で増えています。全体に占める割合は、小学校1.7%、中学校6.0%で、例外的とはいえない数の子どもが学校から離れています。
 休養の必要性を認めた2016年の教育機会確保法制定、高止まりする子どもの自殺件数、そして新型コロナウイルス禍による長期休校が増えました。ここ10年ほどの社会変化の中で、無理して学校に行く必要はないという意識が、保護者はもちろん学校関係者にも広がっています。
 就学義務を徹底するドイツ、免除や猶予を認める米国や韓国、こうした国々に比べると日本の就学義務はグレーゾーンが大きく、形骸化しているように見えます。文部科学省は、柔軟な時間割が組める学びの多様化学校を不登校生の選択肢として、全国に300校設置する目標を掲げています。一律の就学義務と多様な学びの保障の間にはジレンマもあります。両者のバランスをどう考えるのか議論は手付かずで、不登校生の進路・進学の不利も解消する必要があります。実態だけでなく制度面でも、無理して学校に行く必要はない社会に舵を切るのかどうかしっかり議論することが必要です。

(2024年10月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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