不登校児童数の急増

不登校の増加や家庭環境による教育格差の拡大が懸念されています。我が国の初等中等教育は、同時期に空間を共有し、同じ方法で一斉教育を行う学年制を前提とすることで子ども全体の底上げに貢献してきました。教育義務が学校に通う就学義務として果たされることで、対面で集団の中で学ぶことも重視されてきました。
何らかの理由で学校に通わない、通えない不登校の子どもは、コロナ禍でさらに増加し、義務教育段階だけで20万人に迫ろうとしています。この不登校児童生徒数の急増は、新型コロナウイルス禍で遠隔での学びが広がる中、子どもの物理的・精神的居場所としての対面教育の重要性を具現化しているのかもしれません。コロナ禍にあって、現在の学校システムに歪みや、社会・生育プロセスとのミスマッチがあるという子どもからのメッセージと思われます。多様なニーズに寄り添い、全ての子どもの健やかな育ちや学びを保障し、社会的包摂を実現することが社会的責任であることを再認識することが大切です。
コロナ禍は、インターネットの普及後初のパンデミックであり、社会のレジリエンスに情報通信機能が重要であることを明確にしました。子どもたちの学びの継続も例外ではありません。さらに、家庭の社会経済的背景によって学びの継続に格差があり、学習損失にも偏りがあること、学習の前提となるウェルビーイングの格差があることも顕在化させています。
社会的孤立や保護者の失業への不安による子どもの感情的な混乱が生じています。心の安全性が確保されないと学びの保障はできず、社会的にも大きな損失を抱え続けることになります。子ども・若者へのケアの観点からも、教育条件整備や資源配分のあり方の再考が求められます。日本では、一律に教育条件を整備し一律に改善していくことが、教育機会の平等などに資すると考えられてきました。しかし、成長期から成熟期に移行した社会では、一律配分の考え方だけでは格差の固定拡大が起きてしまいます。

(2022年2月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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