世界における出生数と消費者態度指数との関係

出生数の短期変動に関しては、消費者マインドが先行指標として有効なことが知られています。消費者マインドの指標としては、消費者態度指数が用いられます。この指数は、内閣府によって毎月行われる消費動向調査の中の数値の一つで、消費者の今後6ケ月間の消費者動向の見通しを表しています。
消費者態度指数は、2020年4月には、2019年12月に比べ46%落ち込んでおり、当時の混乱と先行き不安感により、妊娠が抑制されたと思われます。その後、一時的な後退は認められるものの、緩やかな回復基調にあるため、落ち込んだ出生数が遠からず取り戻される可能性は残されています。しかし、コロナ禍が長引き実際に雇用環境が悪化すれば、結婚や出産控えが数年にわたり続く可能性もあります。改善しても、先送りされた出生は7~8割しか取り戻せないとする意見もあります。
世界の主要国の出生数の推移をみると、南欧や東南アジアは日本と同様に2021年初めに大きく落ち込んだ一方で、北欧や西欧では、日本よりも感染状況が深刻だったにもかかわらず、出産への影響が限定的に思われます。北欧や西欧では、コロナ禍前後での生活や意識の変化、生活の見通しや不安要因が少なかったことが要因と考えられます。これに対し、日本では若い世代の多くの人々が先行きの不安を訴え、出生数の減少につながっていると思われます。

(2021年7月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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