2016年の日本再興戦略ではイノベーション政策の重要業績評価指標として、今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上入るという目標を掲げています。しかし、政府が目標設定に使ったランキングでは、3年経過した現在もトップ100にいるのは東京大学と京都大学のみで、この間に、中国、シンガポール、香港、韓国の大学が上位に進出しています。政府が国立大学を中心に大学評価を過剰に強める背景には、世界ランキングの伸び悩みがありますが、日本の大学には質の高さと層の厚みという強みがあるとの指摘もあります。
ランキングで取り上げられているのは、全世界の大学、約2万校のうち6%程度に当たる1,258校です。つまり相当な教育力や研究力を有する大学です。この中に、日本の大学は103校入っており、米国の172校に次いでいます。米国には約3千の4年制大学がありますが、日本は750ほどですから、日本の大学は高いレベルで層が厚いといえます。今世紀に入って、17人いるノーベル賞受賞者の出身大学が9校と多岐に及んでいます。また海外の大学・大学院で学ぶ日本人学生は低迷しているものの、日本の大学・大学院で学ぶ外国人留学生は増加しており、海外で学ぶ日本人の4倍を超えています。これまで培ってきたわが国の大学の層の厚みを生かした高等教育の強化等を考えてゆくべきです。
(2019年8月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)