昨年11月に、中国広東省の南方科技大の賀建奎副教授が、ゲノム編集により遺伝子を改変した受精卵で双子を誕生させたと発表しました。同省の調査チームは賀氏の主張は事実だと認定しました。ゲノム編集を行ったのは、エイズウイルス(HIV)に感染した男性と、感染していないパートナーの女性との間でできた受精卵です。男性がHIVに感染し、女性は感染していない8組の夫婦の受精卵にゲノム編集の実験を行いました。その結果、8組のうち1組が、女の子の双子を出産しました。
賀氏によると、研究に参加したカップルの精子と卵子を体外受精させ、遺伝子を改変した受精卵を女性の子宮に戻して妊娠、出産させたとのことです。安全性が確認されていない実験的な方法を行ったことは、生まれた子の人権に関わる問題だとの指摘もあります。人為的に改変された遺伝子は、子や孫にも受け継がれます。フランスやドイツは、遺伝子を改変した受精卵や精子、卵子で妊娠、出産することを法律で禁じています。ドイツは罰金や懲役刑も設けています。
(2019年1月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)