政府は、中小企業のデジタル化を後押ししています。現金取引や紙での受発注が、中小企業の生産性を低めています。企業は、デジタル技術をもとにビジネスモデルを見直すデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを求められています。しかし、中小がデジタル対応を強化しようとしても、関係先が対応できていなければ、中小の成長機会を損なうことになってしまいます。
主な借入先である地銀や信用金庫、信用組合では、資金不足やセキュリティー上の問題からシステム投資が遅れ、ネットバンキングなどのデジタル化が進まないケースもあります。流通では、小売りと卸売業者の間で、紙伝票で取引を管理する慣行が続いています。金融機関や卸売業者などが、地域ぐるみでデジタル化を阻むようなケースは、共謀的として是正を求めています。
日本の中小企業では、生産性の低さが課題になっています。就業者1人あたりの国内総生産(GDP)は、大企業の半分にも満たない状況です。DX対応にも消極的な企業は少なくありません。DXを既に取り組み始めている、検討を進めているとした回答は、大企業の83.2%に対し、中堅企業は56.0%、中小企業は34.9%にとどまっています。
(2021年1月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)