リクルートワークス研究所の推定によれば、2026年春に卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率は1.66倍です。民間企業への就職希望者1人に対して1.6件の求人がある状況で、学生優位の売り手市場が続いています。しかし、特に中小企業にとっては、新卒採用は依然として難しい状況にあります。従業員数が300人未満の企業の場合、求人倍率は8.98倍に上ります。5,000人以上の企業は0.34倍と、依然として開きは大きいままです。
人材確保に悩む中小企業が多い中、新卒の入社希望者が絶えない会社があります。社内に職業訓練校を設け国家資格の取得を支援したり、余暇に賞金を出して社員同士の交流を促したりして、働きがいのある職場づくりを進めているためです。若手社員が採用選考の工程に深く関わる例もあります。こうした企業の入社希望者は採用数の15倍に達しています。
事業の継続性や組織力の強化、社風醸成を考えると、中小企業が新卒採用を続ける意義は大きいと思われます。多くの学生や生徒が入社を希望するような職場をつくるには費用もかかりますが、適切に実行すれば効果は大きく、自らの強みを磨き、学生に分かりやすく伝えることができるかが鍵になりそうです。

(2025年5月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)