ジョブ型雇用の広がりは、日本企業の中高年にとって試練となってきています。日米の賃金カーブを比べると、米国は給与水準のピークである45~54歳の中央値が25~34歳より2~3割高い程度です。これに対して日本は3~4割ほど高くなっています。米国のようなジョブ型に移行すれば、部下のいない名ばかりの管理職らのもらいすぎに下方圧力がかかることになります。
中高年ホワイトカラーへの風当たりが強まったのは、公的年金の財政逼迫のため、企業に高齢者の雇用継続が義務付けられた影響が関与しています。いまの現役世代の年金受給は原則65歳からです。多くの企業の定年は60歳ですが、高年齢者雇用安定法によって、企業は65歳まで嘱託などで雇い続けなければならなくなり、2021年4月から70歳までの就業機会確保も努力義務になり、高齢者の常用労働者の数が急増しています。
みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によれば、企業が負担する65~69歳の従業員の人件費は、2040年に6兆7,000億円と2019年比で3割増えることになります。解雇規制の厳しい日本では、大半の企業にとって、もらいすぎ中高年の賃下げが必要になってきます。デジタル技術の進展などで事業環境が変わり、中高年と若手の働きぶりと賃金カーブの不一致も大きくなっています。
(2021年11月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)