中高年の転職が増えてきています。リクルートキャリアなど人材大手3社の41歳以上の転職紹介数は、2019年度に初めて1万人を超える見通しです。6年前の3倍の水準です。早期退職など上場企業の人員削減策は2019年、1万人を超えています。中高年の転職が活況な背景には人数の多さがあります。バブル世代や団塊ジュニア世代を中心に40歳以上の人口は、約7,800万人と総人口の6割を占めています。
これまで中高年層の転職市場は大きくありませんでした。転職により収入が減るケースも多く、年功序列システムのもと今の会社に居続けた方が収入を保てるためでした。26~30歳の若年層に比べ、41歳以上の転職者数は4分の1程度にとどまっていました。厚生労働省によると、大企業の男性50~54歳の平均月給は51万円、45~49歳が46万円と、25~29歳の26万円の倍近くに達しています。
しかし、企業もシビアになっています。若手社員への給与の再配分やデジタル時代に即した人材を確保するため、中高年のリストラに動いています。最近は大手企業の間で、好業績下で人員削減を進める黒字リストラも拡大しています。一方、働き手の意識も変わりつつあります。デジタル化などで求められる仕事のスキルは日々変わります。人生100年時代といわれる中、長く勤めた企業を早めに去り、蓄えた資産を生かし新たなキャリアを切り開くビジネスパーソンは増えています。
年功序列や終身雇用など日本型雇用は転機にあります。企業が硬直的な人事・給与システムを続けては、デジタル技術を核に激しくなる世界競争を生き残れません。進化した働き方が登場し、自分の都合のいい時間に単発の仕事を請け負うギグワーカーも増えています。新たな潮流が雇用契約を結ばずに業務委託の形で中高年のノウハウと企業のニーズを橋渡しするサービスです。日本でも中高年の転職市場が広がれば、専門知識などを生かして働く機会が増えることになります。
(2020年1月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)