国連食糧農業機関によれば、オランダの農産品輸出額は2020年に1,009億ドル(約14.4兆円)でした。米国の1,479億ドルには及びませんが、ブラジルの852億ドルを上回っています。2021年は前年比9%増の1,047億ユーロ(約15.2兆円)と、過去最高になっています。
オランダは九州とほぼ同じ面積でありながら、農産品の輸出で世界2位の地位にあります。国土の面積から単純計算すれば、オランダは1㎢あたり240万ドル程度の農産品を輸出で稼いでおり、日本と米国のざっと150倍です。
輸出大国になれた要因としては、利益率の高い農産物に絞り込んだことが大きな要因です。チューリップなどの花卉類はオランダの主力輸出品ですが、トマトやパプリカといった野菜類も多くを占めています。育てる作物を少数に絞り込めば、技術開発やノウハウの蓄積がしやすくなります。オランダには日本より大きいビニールハウスが多く、トマトやパプリカは主に温室栽培で育てられています。ビニールハウスならば機器を導入しやすく、室温の管理や水やりに加え、果ては収穫までロボットで可能になります。
国土の小さい国ながら農業大国になった背景には、研究開発やスタートアップの育成に力を入れ、先端技術の導入を躊躇しない姿勢があります。日本も大いにオランダの農業政策を見習う姿勢が必要です。
(2022年9月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)