2021年の国立がん研究センターのがん罹患数予測によれば、この1年でおよそ9万5千人が新たに乳がんの診断を受けるとみられています。成人女性の9人に1人という割合で乳がんに罹患します。年齢別では30代後半から増えはじめ、ピークは40~50代、60代以降も極端に減ることはなく、90代で発症する場合もあります。
2004年に各自治体が行うマンモグラフィ検診が始まってから、0~1期の早期で見つかる人が増えています。40歳以上の人は、2年に1回の乳がん検診を欠かさず受ける必要があります。しかし、検診だけで100%乳がんが見つかるわけではありません。普段から毎月1回は、自分の乳房をきちんと見て触る自己検診を習慣にすることが大切です。しこりや引きつれ、左右の違い、乳首から血液が混ざった分泌液がないかどうかをチエックします。喫煙、アルコールの飲み過ぎ、過度なストレスを避け、健康的な生活を送ることが基本ですが、決定的な予防法はありません。
家族に乳がんに罹った人がいる場合などは、人間ドックなども活用して年に1回は検診を受けるべきです。乳がんの約4%は、BRCAという遺伝子の異常をもったHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)であることが分かっています。2020年4月から、この遺伝子異常を調べる血液検査と、乳がんを発症した場合、まだがんに罹っていないもう片方の乳房を、予防的に切除する手術が保険適用になりました。
乳がんは、がんが乳管内にとどまっている非浸潤がん、乳管の外に広がっている浸潤がんの二つに大きく分けられます。非浸潤がんは、乳がん全体の1割程度で手術だけで治療が完結します。この段階ではステージ0ですが、乳管の中をがんが広がりやすいため、範囲が大きければ、きちんと確実に切除するために全乳房の摘出が必要な場合があります。
浸潤がんの場合、1~2㎝の小さなしこりでも、全身に目に見えないがんが広がっている可能性があります。乳房温存手術の場合は、残った乳房からがんが発生するのを防ぐために放射線治療を行います。さらにがんのタイプによって、化学療法やホルモン療法などの薬物療法を行います。
(吉村 やすのり)