乳がん検診での超音波検査の併用

乳がん検診で超音波検査が再び脚光を浴びています。現在マンモグラフィー(乳房X線撮影検査)が基本ですが、日本人向けに超音波検査が有用であることにより、医療現場では2検査の併用を促す動きも広がっています。
マンモグラフィーは乳房を板で挟み撮影します。がんは白い影として写ります。胸を圧迫するため痛みを感じやすいのが欠点とされています。また、乳腺の量が多い高濃度乳房(デンスブレスト)と呼ばれるタイプの女性の場合、がんを見つけにくい欠点も指摘されています。高濃度乳房だと全体が白く写り、がんを見つけづらいとされています。日本人などアジア系女性は、欧米系女性に比べて脂肪が少なく、乳房内に占める乳腺の割合が高い傾向があります。
欠点を補うと期待されるのが超音波検査です。高周波音波を体に当て、音波の反射状況で内部を調べます。乳腺に妨げられずにがんを発見でき、痛みもありません。放射線を使わず、妊娠中や授乳中も可能です。乳腺濃度が高くない人のがん発見率も9割を超えるとされています。
乳がん検診受診率は5割に満たない状況です。40歳以上は2年ごとの受診が推奨されていますが検診率は低いままです。超音波検査は、自治体検診の対象外で費用がネックとなっています。厚生労働省は、2015年の報告書で検査方法をマンモグラフィーを原則と定めています。OECDの統計では、米国が8割、英国も7割を超えるものの、日本は4割程度です。
日本女性の乳がん罹患数は、2000年の3万7,000人から2017年には9万2,000人に急激に増えています。大腸がんや肺がんを抜いて最も多くなっています。死者も2019年には1万5,000人に達しています。9人に1人が乳がんに罹るとされています。乳がん検診は痛みを伴うことにより敬遠されがちですが、超音波検査を検診に組み込むことにより、検診の受診率を上げることが大切です。

(2021年9月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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